【お薦め本の紹介】「私」という男の生涯 by 石原慎太郎

【お薦め本の紹介】「私」という男の生涯 by 石原慎太郎

石原慎太郎さんが東京都知事時代、福島の放射線濃度のきわめて低い被災地の瓦礫の東京湾での埋め立てに反対する都民に対して、「黙れ」の一言でことを収めてしまいました。そのリーダーとしての格好良さに惚れてしまいました。今回の、石原慎太郎の自叙伝とも言える『「私」という男の生涯』は、婚外子のことも隠さずに綴られています。まさに石原慎太郎という男の生涯が楽しめる本です。

  • 海の上にいると何故昔のこと、特に陸の上での出来事について考えたり思い出したりすることがないのだろうか。ヨットに乗って航海していると、レースの時は当然だろうが、遊びのためのただの航海やレースのための回航の時でも不思議にこの今のことしか考えない
  • 十代でスポーツを始めたことの功徳はもう一つあった。それは人間の能力の格差という不条理についての自覚
  • 国も都も財政運用のために踏襲している単式簿記なるものが、発生主義による複式簿記に比べていかに効率の悪い制度かという認識をもたらしてくれたことだった。人間の人生にちりばめられた出来事がいかなる伏線となって後に役立つかは、まさに神のみぞ知る人生の妙味
  • 何よりも弟と対照的に私が後に入った学生寮で味わった貧困は現代の過剰な奢侈と物の氾濫の中で思い返せば、なんとも懐かしく得がたい、ある種の豊かさだった
  • 私が有名になったのは芥川賞のお陰というより、逆に芥川賞こそが私のお陰で有名になったのだと自惚れてはいる
  • 人気の絶頂の時にあっさり引退して結婚してしまった山口百恵さんが「自分にとって理想的な家庭の妻は石原夫人です」とどこかでコメントしてくれていた
  • 私の妻やNやSやあのYにせよ、私が強いたわけではないが私のために多くの犠牲に耐えてくれた彼女たちのお陰で、私の人生はかなり深く彩られたものとして在ることが出来た
  • 政治家として在任中にものした著作の中で皮肉なことに圧倒的に評判となり、続編も含めれば二百万部を超えて話題となったのは『「NO」と言える日本』
  • アメリカの核戦略の警備体制の基点に他ならない。その機能はその名の通り北アメリカとカナダのごく一部をカバーしているだけで日本は完全に埒外
  • 官僚なるものがいかに己の属する機構のために政治家を騙し、国民の不利益をも顧みずに行政をねじ曲げるかという虚構を実感した
  • 人間の人生は所詮自分以外の人間たちとの出会いの集積
  • 二年足らずの内に東京の空気は一変した。誰よりもそれを喜んでくれたのは東京に多い、多くの喘息患者たちで、彼等の所見では従来の病状が一変して軽くなった
  • 老いへの対処についての「結論は神仙の境地になるということですな。つまり諦める、忘れるということしかありませんな」
  • 老化は一種の希薄化された死であり、死という瞬間への減速装置であって、言葉では表現不可能な死という瞬間を時間の経過の中に溶かして伝達する作用
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