先日、弁護士法人サリュの谷清司さんが書かれた“ブラックトライアングル”という本を読みました。
谷さんは、交通事故の被害者の立場に立ち、親身になって事件処理する弁護士があまりに少ないと指摘され、
交通事故補償の3つの壁として、“損害保険会社”、“自賠責システムを担う国”、“裁判所”の問題を
指摘されていました。いくつか紹介します。
①症状固定とは、医師には理解できるのですが、「これ以上治療しても症状は改善しないという状況」をさします。
損害保険会社は、保険金額を自賠責以内に抑え、いかに任意保険の支払いを少なくするかに終始します。
そのため、症状固定を急がせるのです。
②さらに、保険会社は日弁連と組んで、示談代行権をもち弁護士資格がないのに示談をすることが
できるのです。
つまり、一個人の被害者と、営利団体の専門家である保険のプロが同じ土俵で示談交渉しているのです。
③すべてのもとになる後遺障害ですが、殆どは12級か14級。特に頸椎捻挫(=むち打ち)は殆ど14級。
その後遺障害の認定は、損害保険料算出機構という機関で行われます。
しかし、損害保険料算出機構とは、損害保険会社によって構成されているのです。
④裁判官は、常に100件以上の訴訟を抱えているので、和解で助かるのは、判決文が不要となる
裁判官自身です。したがって、示談代行権を持つ保険会社の言うなりの和解になる事が多いのです。
⑤書き方を一切習わない医師が作成する診断書。
これだけ多くの方が、交通事故に遭っている現状では、誰でも被害者になりえます。
しかし、“後遺症認定をする医師”、“保険会社による補償”、“納得がいかない場合の裁判所”、いずれも被害者の立場が弱くなる構造になっているのです。
しかも、この中でも指摘された、診断書を作成する医師の問題は、私が、“介護にいくらかかるのか”でも指摘したことと全く同じです。
今後、医師の教育機関等でも理解が深められればと感じました。