高血圧かも?と診断されたら…家庭血圧測定を薦める5つのメリット

高血圧かも?と診断されたら…家庭血圧測定を薦める5つのメリット

血圧が高い状態が続くと、血管だけではなく全ての臓器に障害が加わります。特に影響を受けやすいのが、心臓(心不全、心筋梗塞、狭心症)、腎臓(高血圧性腎不全)、脳(脳出血、脳梗塞)です。そのため高血圧かどうか調べることは、病気の発症予防のために大切な検査になります。しかし血圧は、病院で測定すると高くなってしまう方もいらっしゃいます。ですから検診等で高血圧を感じた方は、日常生活の中で血圧を測定することをおすすめします。今回の記事では、認定内科専門医の長谷川嘉哉が家庭血圧を測定することによる5つのメリットを解説します。

1.家庭で血圧を測ることの5つのメリット

家庭血圧を測定すると以下のようなメリットがあります。

1-1.白衣高血圧がみつかる

白衣高血圧とは、日常生活における血圧は正常範囲内であるにもかかわらず、病院や診療所などにおいてのみ血圧が高くなることを言います。もともと高血圧の人で、病院や診療所で測定した血圧が特に高い値を示す場合は「白衣現象」と呼びます。

白衣高血圧は短期的な数値の上昇のため、高血圧による合併症がなければ治療の必要性は低いといわれています。ただし経過の中で高血圧に移行することもあるため、家庭での定期的な血圧の測定がお勧めです。

asian doctor checking blood pressure of a senior patient
医師や看護師に測定してもらうと、平時より高くなる人がいます

1-2.仮面高血圧がみつかる

外来での血圧は正常なのに、外来以外の血圧が高い血圧を「仮面高血圧」といいます。医師の前では仮面をかぶって高血圧ではないように見せることから「仮面高血圧」と呼ばれています。 仮面高血圧は、脳心血管疾患が普通の高血圧の人々より早く進行するため適切な降圧治療が必要です。

1-3.早朝高血圧がみつかる

昼間、測定する血圧は正常なのに、実は朝方の血圧が高いというケースもあります。起床時は、血液が濃縮されているため、急激に血圧が上がると、血管が破れたり詰まったりしてしまいます。これが脳心臓血管疾患などの原因となるのです。たとえば心筋梗塞の例をみると起床後1時間以内に最も発作が起こりやすくなっています。ですから早朝高血圧は特に注意が必要なのです。家庭で起床直後と夜の血圧を測ることで早朝高血圧を発見できます。

Female patients fall unconscious from a wheelchair on the floor. Heart attack, patients do not help themselves.
起床直後に倒れる方が結構います

1-4.血圧は変動していることが分かる

患者さんによって、血圧の値は固定していると勘違いしてい方がいます。そのため、医師が測定した血圧の数値に一喜一憂する方がいらっしゃいます。しかし血圧はたえず変化しています。

1日という長さで血圧の変化を見ると、朝、起床前からその日の活動に備えるように上がり始め、日中の動いている時間帯では高くなり、夕方から夜に活動しなくなると下がり、睡眠中はさらに低くなるという基本的なカーブを示します。

これを血圧の日内変動といいます。ただし、動いている間でも、運動やストレスなどに応じて変化します。ですから、日内変動のカーブは人によって異なりますし、同じ人でも日によって異なります。

1-5.高血圧に早めに気が付くことができる

高血圧はいきなり血圧が高くなるわけでありません。徐々に年数を重ねながら、高くなっていきます。そのため毎日家庭血圧を測定しているとその変化に早く気が付くことができます。医師の目からすると、早い段階に高血圧を見つけて、軽い降圧剤を追加すると、動脈硬化性変化の進行が抑えられるため、最小限の降圧剤の服用で済むことが多くなります。逆に、長期間高血圧を放置されると、強い降圧剤を複数投与する必要が出てきます。つまり血圧の治療が必要な場合は、早めに治療したほうが服薬する薬は弱く、少なくて済むのです。

2.どんな人が測定するべきか

私の外来では、以下の方に家庭血圧をお勧めしています。

2-1.検診で高血圧を指摘された人

検診で収縮期血圧が160mmHg以上を指摘された場合は、早い段階で降圧剤治療が必要になります。しかし、収縮期血圧が140〜160mmHgの方の場合、いきなり降圧剤治療は行いません。だからと言って全く外来フォローしないのも医師として不安です。そんな場合は、家庭血圧の情報がとても重要となります。

2-2.高血圧の家族歴がある人

はっきり言うと高血圧は遺伝です。両親のどちらか、もしくは両方が高血圧である場合、高血圧になる可能性は極めて高いです。通常は、50歳を前後して血圧が高くなってきます。そんな時、不思議と女性は、「私は20代のころは低血圧気味であった」と主張されます。申し訳ありませんが、血圧が高いことが現実で、必要なら降圧治療を行います。

2-3.脳心臓疾患の既往がある患者さん

脳血管障害(脳梗塞、脳出血)や虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)の既往がある患者さんは、仮面高血圧や早朝高血圧があることが多いものです。

3.家庭血圧測定の方法

家庭血圧は以下の基準と方法で行います。

3-1.基準

一般に家庭での測定値は、病院よりも低めになります。そのため基準値も少し低く設定されています。家庭での測定では「収縮期血圧が135mmHg以上、かつ拡張期血圧が85mmHg以上」を高血圧の目安とします。


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3-2.測定方法

歩いたり、飲食したりすると血圧は上昇します。血圧測定時には椅子などに腰掛け、体の力を抜いて1〜2分間安静にしてから測定します。上腕(肘関節より上)に腕帯をピッタリと巻きます。測る腕の高さが心臓の高さになるようにして下さい。

3-3.測定時間

1日2回、時間を決めて測定してください。

朝:起床後1時間以内、排尿後、朝の服薬前、座った姿勢で12分間安静にした後
晩:就床前、座った姿勢で12分間安静にした後。
入浴や食事の直後は血圧の変動が激しいので避けてください。

特に、起床後すぐの血圧測定は重要です。夜から明け方にかけて、急激に血圧が上昇する患者さんがいらっしゃいます。こうした人は心臓病や脳血管障害を起こしやすいことがわかっています。夜眠っている間の血圧は朝の血圧値に表れやすいため、朝の血圧測定が重要なのです。

4.家庭血圧を役立った例

医師はできるだけ、降圧剤を処方したり増やしたくはないものです。しかし、逆に必要な際は的確な処方・増量も必要になります。

4-1.降圧剤を増やす必要がなかった

外来で、降圧剤を1錠飲んでいる患者さんがいらっしゃいました。しかし、外来で血圧を測定すると、収縮期血圧が150〜160mmHgと少し高めです。降圧剤の追加を考えていましたが、家庭血圧の測定をお勧めしました。

その結果、家庭血圧では朝も夜も収縮期血圧が120〜130mmHgと安定しています。そのため、白衣現象の要素もあると判断し、降圧剤を追加せずにフォローしています。医師は「薬を増やす必要がない」という根拠が欲しいのです。家庭血圧はそんな根拠になるのです。

4-2.降圧剤を的確に増やすことが出来た

脳梗塞の既往のある患者さんです。外来での血圧は収縮期血圧が130〜140mmHgと安定しています。しかし既往歴を考えて、家庭血圧の測定をお勧めしました。

その結果、家庭血圧では起床時の収縮期血圧が160〜170mmHgとかなり高くなっていることが分かりました。すぐに、降圧剤を追加することで起床時の血圧も120〜130mmHgと安定してコントロールされるようになりました。

5.オススメの機械

Senior woman measuring her blood pressure at home.
測り方によって誤差が出るものがあります

家庭血圧計には、上腕にカフを巻いて測るタイプ(上腕型)、手首で測るタイプ(手首型)、指にはめて測るタイプ(指型)の3種類があり、さまざまな会社から発売されています。これらのうち、手首で測るタイプや指にはめて測るタイプの血圧計は、測り方によって誤差が大きくなります。

上腕にカフを巻いて測るタイプは、心臓の高さに近いため、測定値が最も安定します。そのため医師が使っている血圧計と同様にあまり誤差がありません。これから購入される場合には、上腕型を選ぶことをおすすめします。その一例をAmazon広告からご紹介します。

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6.まとめ

  • 家庭血圧を測ることで、白衣高血圧、仮面高血圧、早朝高血圧を見つけることができます。
  • 同時に、血圧の変動も知ることができ、高血圧を早い段階で見つけることもできます。
  • お勧めの機械は、上腕にカフを巻いて測るタイプです。

なお、血圧の重要性については以下の記事も参考になさってください。

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