今回は遺族年金についてご紹介します。ただし、遺族年金というと若くして配偶者をなくされた方の話が多いものです。今回は、あまり取り上げらない、年金生活になった夫婦の配偶者がお亡くなりになった際の年金についてFP資格をもち脳神経内科専門医長谷川がご紹介します。
目次
1.喪失感よりも経済的に大変
先日、外来の患者さんでご主人を亡くされた方がいらっしゃいました。患者さん曰く、「長年連れ添った配偶者の喪失感は確かにありますが、それ以上に経済的に日々の生活が大変」とのこと。話をきくと患者さんは専業主婦で、ご主人は厚生年金であったとのこと。夫婦元気であった頃は、合わせて20万円以上の年金をもらい、住宅ローンも終わり、子供も独立していたためそれなりに余裕がある生活をしていたそうです。
2.遺族年金は3/4も受け取れない?
一般的に、知識ですと厚生年金をもらっていたご主人が亡くなった場合は、概ね3/4の遺族年金がもらえるといわれています。そのため自分も夫婦で20万程度の年金をもらっていれば、15万円程度は受け取れると感じていました。しかし、私の患者さんにその話をすると、「とんでもない、もっと額が少ないです」とのことです。
3.遺族年金をもらっても生活は大変!
そこで改めて概算してみました。
- ご主人がサラリーマンで国民年金6.5万円+厚生年金8万円
- 奥様は専業主婦ですから国民年金6.5万円
これで世帯としては毎月21万円になります。ご主人だけの年金で年間174万(14.5×12か月)も極めて標準的です。通常、ご主人が亡くなるとご主人の年金の3/4が遺族年金として奥様に支給されますが、これはあくまで厚生年金の3/4です。つまり、奥様が受け取れる遺族年金は8万円の3/4の6万円。今後は、自身の国民年金6.5万+遺族年金6万円の合計12.5万円で生活していく必要があるのです。日々の生活では、二人であろうが一人であろうが一定の固定費がかかります。今まで21万円だった生活費が、いくらご主人が亡くなったとはいえいきなり12.5万円では生活は大変です。
やはり生前から、配偶者が亡くなった際に世帯の年金がどの程度になるかは概算しておく必要があります。そして、その場合に備え一定の貯蓄等も必要なようです。
4.まとめ
- 配偶者を失うと、精神的な喪失感だけでなく経済的にも大変です。
- 遺族年金で受け取れるものは、あくまで厚生年金の3/4です。
- 配偶者が亡くなった際に備え一定の貯蓄等も必要なようです。