先日、「介護施設に入所したけれど、定期的に診察をしてくれる協力医に対して信頼がおけないので退所したい」という相談を受けました。患者さんのご家族は、施設を探す際は一日でも早く入所できることを優先しがちです。しかし、施設を選択する場合は、『協力医』が重要になります。施設の介護者が素晴らしくても、協力医のレベルが低くくては困ります。今回の記事では、16の施設の協力医をしている長谷川嘉哉が、施設の協力医の見極めについてご紹介します。
目次
1.施設の協力医とは?
介護施設では、介護が提供されます。そのため、定期的な医学的管理や状態が悪化した際の対応が必要になります。具体的には以下の行為を行います。
1-1,定期的な診察
私の医療法人ブレイングループでは基本的に月に2回の診察を行っています。家族によっては、「高齢者は主に服薬だけなのに、月に2回も診察が必要?」との疑問を持たれる方もいらっしゃいます。しかし、高齢者こそ変化が激しいものです。定期的な採血や、状態把握で微妙に薬の調整を行っています。とくに心不全などはBNPの値などで早め早めに対応することで、心不全による救急搬送を予防することができます。BNPについては以下の記事も参考になさってください。
1-2.認知症の周辺症状のコントロール
多くの施設には認知症患者さんが入居しています。入居しているような認知症患者さんの場合、物忘れといった中核症状より、幻覚・妄想・介護抵抗といった周辺症状が問題となります。周辺症状のコントロールができないと、施設側から退所を求められることさえあります。この周辺症状のコントロールについては専門性が求められます。私自身はこの点が評価され、多くの介護施設から協力医依頼をいただいていると思っています。逆に協力医に周辺症状のコントロールの知識がないと、本当はコントロールできる周辺症状が原因で退所になっている方もいらっしゃると思われます。
1-3.看取り
定期的に入居者さんの診察をしているなら、家族が希望されれば施設の看取りもすることが大事です。しかし協力医の中には看取りはせずに、最後は医療機関に送ってしまう方もいるようです。そうするとせっかくの人生の最期が、病院になってしまうの残念でなりません。
2.施設ごとの協力医の特徴
施設によって協力医には特徴があります。
2-1.特別養護老人ホーム(以下特養)
一般的には特養には医師は在籍しません。そのため地域の開業医が協力医になります。しかし制度上、特養の協力医になった場合の保険診療点数は極めて低額です。その割には100名近い患者さんを担当する必要があります。開業医としては忙しいなか、本当は引き受けたくないかもしれません。実際、多くの特養が協力医の確保に困っています。そのため協力医の質を問うことは困難です。
2-2.老人保健施設(以下老健)
老健には医師が常駐しています。医師が常駐していると聞くと響きが良いですが、老健の医師は、殆どが「医師の老後の職場」です。多くは、定年退職後の医師が働いています。施設によっては、入居者と協力医の先生の区別がつかないこともあります。やはり多くの老健は医師の確保に困っており、協力医の質を問うことは困難です。
2-3.グループホーム(以下GH)・サービス付高齢者住宅(以下サ高住)・有料老人ホーム
紹介した特養と老健は介護保険上の施設になりますが、GH、サ高住、有料老人ホームは介護保険上の在宅になります。そのため施設側が地域の開業医と連携することになります。この場合は、どの開業医を選択するかが重要となります。
3.理想の協力医
私が考える理想の協力医は以下です。
3-1.専門は本当の内科
やはり本当の内科医が基本です。内科を標榜していても実際は外科であったり、皮膚科や泌尿器であるケースもあります。内科の標ぼうについては以下の記事も参考になさってください。
3-2.認知症も診られる
認知症も診てもらえて、さらに内科的なフォローもしてもらうには脳神経内科が理想です。ただし外科でも脳神経外科の先生方は、開業すると積極的に認知症を診ていただけるのでお勧めです。
3-3.強化型在宅支援診療所
看取りをしてくれる医師が理想です。口だけで「看取りもします」という医療機関もあるので注意が必要です。医療機関が「強化型在宅支援診療所」であれば間違いがありません。この届出を取っていれば、複数の医師がいて、看取りの実績があることの証明になります。
4.協力医の調べ方
ならば協力医を調べるにはどうすれば良いでしょうか?それには医療機関のホームページを調べることが重要です。今どきホームページがないような医療機関は避けましょう。きちんと医療機関の説明がされ、定期的に更新されている医療機関を選びましょう。そうすると、医療機関の専門、強化型在宅支援診療所であるかもわかります。そもそも、それらの情報もないようなホームページであればやはり避けた方が良いと思われます。
5.リベートを要求する介護施設も
私も経験したことがあるのですが、介護施設によっては医療機関に対して患者一人当たりのリベートを要求することがあります。そしてリベートを拒否すると、すぐに医療機関を変更されてしまうのです。そこには、入所者さんに良質な医療を提供しようという意思はありません。頻回に協力医がかわる入居施設は注意が必要なのです。
6.まとめ
- 入居施設を選ぶ場合は、協力医選びも大事です。
- 理想の協力医は、認知症が診られ、看取りもできることです。
- 頻回に協力医がかわり介護施設には、何か問題があることが多いため避けたいものです。